沈黙の力

「そうですね・・・・・」
学びの途中だった私は、この「・・・・・」という沈黙になった時「どうしよう?次に何を聴こう」と、頭の中の思考をグルグルと巡らせ、焦りに焦っていた事を思い出します。「どうしよう?」と考えている時点で、私の思考の矢印は自分に向いてしまい、相手の心から離れてしまうので信頼関係の構築には程遠いものになります。逆に、間もなく、次々と話を進めてしまう時は、相手の事を考えず自分のペースでドンドン進めてしまい、相手は置き去りになる、ということもあるかもしれません。
会話の中で訪れる「沈黙」
それは気まずさを生むものとして敬遠されがちですが、実はコミュニケーションを深める為の大切な要素でもあります。
沈黙の難しさと向き合う
多くの人が沈黙に対して苦手意識があるのではないでしょうか。沈黙は、話が続かない、気まずい、と捉えられることが多いため、つい無理に話題を探そうとしてしまうかもしれません。しかし、沈黙があるからこそ、言葉の重みや相手の意図をしっかり受け止めることができるのではないでしょうか。
沈黙の時間とは?
沈黙がどれぐらい続くと「長い」と感じるかは人それぞれですが、一般的に3~5秒程度の沈黙は自然な間とされ、それ以上続くと気まずさを感じることがあるようです。また、話し手と聴き手では沈黙の感じ方が異なり、話し手にとっては数秒の沈黙でも長く感じる一方で、聴き手はそれほど気にならない事が多いと言われています。
また、沈黙は内省を深めるきっかけにもなります。言葉にしようとする前に考えを整理する時間を持つことで、より深い洞察や新しい気づきが生まれることがあるのではないでしょうか。
心地よい沈黙を生み出すために、では、どうすれば会話の中で心地よい沈黙を作り出すことができるでしょうか。
- ■間を恐れない
沈黙を「埋めるモノ」と考えるのではなく「会話の流れの一部」として受け入れることで、会話には自然なリズムが生まれるのではないでしょうか。
- ■相手の話をしっかり聴く
相手が話し終えても、すぐに自分の意見を言うのではなく、少し間を置くことでより深く考えた言葉が出てきます。特に、上司の方が部下の話を食い込み気味に話してしまうケースは多いのではないでしょうか?話し終えた余韻にその人の意志や感情が表れるとも言うそうです。その気持ちを感じる事も時には必要なのかもしれません。
- ■非言語コミュニケーションを意識する
目を合わせる、うなずく、微笑むといった動作で、「あなたの話を受け止めています」というメッセージを伝えることができます。その非言語のコミュニケーションは、相手を励まし、話し続ける勇気を与えるのではないでしょうか。
- ■安心できる雰囲気をつくる
相手が沈黙を怖がらないようにするためには、「何を言っても受け入れてもらえる」と思える信頼関係を築くことが大切です。その安心安全な空間があるからこそ、「実は・・・」と自分の奥底にある気持ちを思わず吐露するのではないでしょうか。
- ■聴き手が待つ姿勢を持つ
相手が考えをまとめる時間を尊重し、焦らず待つことも大切です。急かさず耳を、心を傾けることで、相手が安心して自分の考えを表現できるようになるのではないでしょうか。言葉だけでなく、ふと笑顔になったり、ふと涙を流したり、思いにふけったり、そんな感情が見えてくるかもしれません。
会話の中で適度な沈黙を持つことで、相手の言葉をしっかり受け止める余裕が生まれ、より質の高いコミュニケーションに繋がります。また、相手との関係性が深まると、沈黙すら心地よく感じることができるようになります。以前、恩師の方が「内省を深めるきっかけとして、あえて自分から沈黙をとってみることがある」と言われた時、びっくりしたと同時に、私も一日でも早くその境地に近づきたいと思いました。
沈黙を怖がらず、むしろ積極的に活用することで、会話はより豊かな温かいものになり「沈黙が心地よい関係」を築くのではないでしょうか。
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