対話の力

「人は自己を語るときに自己を構成する」
これはキャリア心理学者、マーク・サビカスの有名な言葉です。
この言葉を初めて聞いたとき、私はハッとしました。自分のことを“話す”という行為が、自分自身を“つくっている”というのは面白いなあと思いました。
実際、誰かと話していて「こんなこと、自分の中にあったんだ~」とビックリした経験はありませんか?あるいは、自分でもうまく言語化できなかったモヤモヤが、誰かに話すうちに輪郭を持ってきた・・・ということはないでしょうか?
これは決して偶然ではなく、人は語ることによって、自分という存在を少しずつ形づくっていくのです。でも、その「語り」は、自分一人では完結しないのです。むしろ、信頼できる誰かとの対話の中でこそ、深まるものではないでしょうか。
先日、ある方から素敵な夕陽を見た!という経験の話を伺い、夕陽への思いから、周りの方への感謝の話になり、これからの自分の人生の決意表明をする・・・・そんな対話を経験し、素敵な時間を過ごしました。
自己理解は「独り作業」ではない
「自己理解」や「内省」は一人で静かにやるもの・・・と思いがちではないでしょうか。もちろん、内省の時間も大切です。ですが、自分の世界だけに閉じこもっていては、見えるものも限られてくるかもしれません。だらこそ、他者と語り合うことが大切なのではないでしょうか。
他者との「対話」があるからこそ・・・・
・違う視点をもらう
・無意識だった価値観に気づく
・自分の言葉で話すことで思考が整理される
といった作用が働き、自分の“物語”が生き生きと立ち上がってくるのです。
そして、「対話の力」は部下との関係にも活かせるのではないでしょうか。これは、上司としての語りと、それ以上に、部下の語りを促すことが重要なのかもしれません。
部下との信頼関係を築くうえで、上司自身が自分の思いや経験を語ることも、実はとても大切で、「自分の過去の失敗談」「なぜこの仕事を選んだのか」「今、大切にしている価値観」こうした“個人のストーリー”は、単なる情報ではなく、こうした個人的な話には、共感や安心感を生む力があります。上司という立場でも、素の自分を少しずつ語ることで、部下も自分の語りを始めてくれるようになります。その対話の積み重ねの中で、信頼が育まれ、お互いの理解が深まっていくのです。
そして何より、自分自身が、「語ることで、自分を再発見する」という自己概念を知ることになるのです。上司の方も、自分という木はどんな木なのか?これからどんな枝葉をつけ、どんな花を咲かせたいのか?林をつくるのか、森をつくるのか?それは何の為なのか?一つ一つ言葉にしていく作業はとても意味のある事ではないでしょうか。
そして、何よりも、部下の方に「自分のストーリー」を自由に語ってもらい、上司の方が丁寧に関わる事は、どんな業務の指示よりも効果を発揮し、その時だけでなくこれからの信頼関係にも繋がり、チームや部署、組織全体にもよい影響となるのではないでしょうか。
語りとは、相手の存在があってこそ育まれるもの。
そして、その語りの中で、私たちは新しい自分に出会っていきます。
自分一人ではたどり着けなかった言葉、気づけなかった価値観、見えていなかった願い・・・それらは、信頼できる相手との対話の中で、少しずつ浮かび上がってきます。ぜひ、ちょっと意識して、部下や周りのメンバーと「対話」をしてみませんか?
語ることで、人生が耕されていく。
そんな実感を味わっていただけたらと思います。
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