わかってもらえる安心感が、キャリアを前に進める力になる

「最近、メンバーと本音で話せていない気がする」
「部下との距離感がうまくつかめない」
そんな戸惑いを抱えているリーダーや管理職の方も多いのではないでしょうか。
特に30代後半から40代に差しかかる頃、自分のキャリアにも、組織での立ち位置にも少しずつ変化が訪れます。責任は増す一方で、誰かに相談する機会や、自分の内面をゆっくり話せる場は少なくなりがちかもしれません。そして気がつくと・・・多くの人が「自分の思いが理解されない」「言ってもどうせわかってもらえない」という諦めの中で、言葉にできなかった思いを胸の内に溜め込んでいるのではないでしょうか。
だからこそ今、「聴いてもらえる」「共感してもらえる」という体験の価値は、言葉以上に大きな意味を持っているのではないでしょうか。そして、その体験の本質にあるのが「交響する対話」です。
■ 対話とは「響き合い」
私たちはつい、「対話=話し合い」「対話=問題解決の手段」と捉えがちです。しかし本来の対話とは、自分の考えや感情を安心して開示し、相手の言葉にもじっくりと耳を傾ける、双方向の関係性なのです。
その関係の中で生まれるのが、「交響」です。交響とは、異なる価値観や背景を持つ者同士が、共鳴し合い、心の深い部分で響き合う体験のこと。音楽の交響曲のように、それぞれが異なる“音”を持ちながら、一つのハーモニーを生み出すような関係なのです。
■ 交響が生む「わかってもらえた」という安心
交響的な対話の中では、思ってもみなかった感情がふいに言葉になる瞬間があります。「うまく言えないんだけど……」と口にしたとき、相手のうなずきや共感のまなざしに支えられて、自分でも気づいていなかった想いが少しずつ形になっていくのです。
そしてそれが、「ああ、自分のことをわかってもらえた」という体験に変わります。この体験は、表面的な「理解」以上のもので、「自分はここにいていいんだ」「この気持ちを大事にしていいんだ」と感じられる、存在の根っこに響く安心感に繋がっているのではないでしょうか。
現代は、便利になった一方で、対話が減り、人間関係はどこか希薄になりがちです。そんな中で、「本当の意味でわかってもらえる」ことの価値は、非常に大きなものになっているのかもしれません。
■ 交響はキャリアを動かす力になる
こうした交響の体験は、単に心が癒されるだけではありません。自分の価値観や働く意味を再発見するきっかけにもなります。たとえば、「なぜ今の仕事に違和感を覚えるのか」「何に喜びを感じてきたのか」といった問いは、一人では整理しにくいものです。しかし、誰かとの信頼ある対話の中で語ることで、意外な気づきや“自分らしさ”が浮かび上がってくるのです。皆さんも、「ちょっと聞いてもらえますか?」から始まる対話の中に、自分自身のこれからのキャリアのヒントが眠っているかもしれません。
■ 組織を育てる「交響するリーダーシップ」
交響的な対話は、リーダー自身の成長だけでなく、チームや組織にも良い影響を与えます。メンバーが「この人には本音が言える」と感じたとき、チームには心理的安全性が生まれ、創造性や協働意欲が高まっていきます。指示・命令だけでは引き出せない力が、交響のある関係性の中では自然と育っていくのです。
交響の第一歩は、相手の話を「評価せずに聴くこと」です。うまく整理されていない言葉でも、途中で止まってしまっても、じっくり耳を傾ける。その姿勢そのものが、相手に安心と信頼を与えるのではないでしょうか。
前職の話。「支店長って孤独だな・・・」そう感じ、ひたすらパソコンに向かい、苦手な数字や決裁書と戦っていた事を思い出します。きっとその姿は“忙しい支店長”の姿で、そうなると“話しかけにくい支店長”という姿に変わり、私は、孤独感ではなく本当の孤独、孤立になってしまっていたのではないか?とも思います。いくら数字を組み立てても一人では何ができるわけもなく、そこから、楽しく仕事をするには???と考え、「ガッツリ数字に向き合う時間」と「ガッツリスタッフと向き合う時間」をコントロールするマネジメントスタイルになりました。そして、スタッフと向き合う時間が、支店運営のヒントになり随所に活かされた事は言うまでもありません。
これからのキャリアに迷いを感じるときこそ、誰かと心を通わせる対話の時間が大きな力になります。うまく言えなくても大丈夫です。「ちょっと聞いてほしいな」そんな一言から始まる対話が、思いがけない気づきや安心感を運んでくれることもあります。日々忙しく過ごす中でも、自分や仲間と“響き合うひととき”を、少しだけ意識してみませんか?
“わかってもらえる喜び”が、キャリアを前に進めるのではないでしょうか。
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