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言葉にならない「気持ち」に寄り添う力

城戸 貴子

「話しの内容としてはポジティブだけど、どこか引っかかる…」

「言葉では順調そうに聞こえるけれど、なぜか気になる…」

1on1や面談の場で、部下やメンバーの話に耳を傾けているとき、このような感覚を持ったことはありませんか?それは、言葉にはならなかったけれど、確かにそこにあった“感情のサイン”かもしれません。

私たちが受け取っている情報の多くは、言葉以外の「非言語的(ノンバーバル)」なものだといわれています。表情、間、声のトーン、姿勢、しぐさ―それらは、その人の本音や整理しきれていない気持ちが自然とにじみ出る場所でもあり、そうした“言葉にならない何か”に目を向ける力が、対話を深めるうえでとても大切なのです。

話されたこと“だけ”に注目すると見失うもの

人は話しながら、自分の気持ちを整理していきます。だからこそ、話している内容がまとまりきっていなかったり、言葉に詰まったりすることがあります。でもその“まとまらなさ”こそが、実はとても重要なサインなのかもしれません。

例えば、こんなケースがあります。

「特に困ってることはないです」と言いつつ、声が小さく目線が泳いでいる。

「今の部署、やりがいはあります」と言いながら、どこかためらいがちな表情を見せる。

こうした微細な“ズレ”は、心のどこかにある整理しきれていない気持ち、あるいは自分でもまだうまく認識できていない感情が表れている可能性があります。

ノンバーバルに目を向けるとはどういうことか?

ノンバーバル(非言語的)なサインとは、表情、声のトーン、姿勢、間の取り方、視線やしぐさなど、言葉以外の情報すべてを指します。私たちは思っている以上に、無意識にこれらの情報をたくさん受け取っています。

だからこそ、1on1の場では次のような“サイン”に意識を向けてみることが大切なのではないでしょうか。

言葉と表情が一致しているか?

話すテンポが急に変わったり、間が長くなっていないか?

話題を変えるときに、妙に早口になっていないか?

身体の動き(そわそわ、固まり)に変化はないか?

これらを観察し、気づきをそのまま丁寧に伝え返していくことで、相手が「実は…」と本音を語り出す瞬間が生まれることがあるかもしれません。

気づいた“違和感”をどう扱うか?

ノンバーバルな違和感に気づいたとき、大事なのはそれを「決めつけない」ことです。相手の気持ちや状態を勝手に“こうだ”と判断や評価してしまうと、せっかくの対話の芽を摘んでしまいます。

たとえば・・・

「今のお話を聞いていて、言葉では前向きな感じがするけれど、ちょっと表情が曇ったように見えて…何か引っかかっている部分ってありますか?」

これは“感想”であって“評価”ではありません。大切なのは、I(アイ)メッセージで伝え、最後には対話のバトンを相手に返し、相手が自分の気持ちに気づけるきっかけをつくることです。

対話は「整理されていない気持ち」と出会う場

1on1や面談の場においては、きれいに整理された結論を聞き出すことが目的ではなく、むしろ、言葉になりかけている“途上の気持ち”と一緒に向き合うことこそが、対話の本質なのではないでしょうか。

人は誰かに聞いてもらいながら、初めて「あ、自分はこう思っていたのかもしれない」と気づくものです。その“気づき”のきっかけを生み出すには、話の内容だけでなく、語られていない部分にも耳をすませ、相手をちゃんと見る姿勢が大切なのです。

ノンバーバルに気づくとは、相手の全体を「聴く」ということ。それは、自分の“感受性”を開いておくということでもあります。

忙しい毎日の中では、つい「何を言ったか」にばかり意識が向きがちです。でも、1on1の時間だけでも、少しだけ“耳以外”も使ってみてください。

何気ない表情のゆらぎ、声の奥のかすかな揺れ、それらは、相手からの「まだ言葉にできていないSOS」かもしれません。

対話の質を高める“ノンバーバル”の感受性を大切に扱い、言葉にできない思いに寄り添うことができたとき、対話は“信頼”という次のステージへと進んでいくのではないでしょうか。

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城戸 貴子
城戸 貴子
キャリアコンサルタント
九州女子短期大学体育科卒業。小学生から短大まで水泳とソフトボールに明け暮れる日々を送る。卒業後、大手スポーツクラブで勤務。退職後、キャリアコンサルタント国家資格取得。「自分らしく」「生き生きと働く」ライフキャリアやワークキャリアを考え、歩んでいけるお手伝いをします。自分も周りも幸せになる世界を目指して。趣味:音楽鑑賞・ライブ参戦・読書(本屋さんが大好き)・空を見るのが大好き 好きな言葉は「雨過天晴」自分のキーワード「挑戦する・感謝する・ワクワクする」
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