自己紹介はキャリアの“今”を映し出す鏡
 
										みなさんは「自己紹介」をするとき、どんなことを話していますか?
名前の由来を伝える人もいれば、会社での役職や役割を中心に語る人もいます。あるいは、趣味や最近ハマっていることを話す人もいると思います。
一見すると「自己紹介」は定型的なものに思えますが、よくよく観察すると、その人の価値観や関心、そしてキャリアの歩みが表れる瞬間でもあるのではないでしょうか。
自己紹介ににじみ出る個性
同じ集まりでも、人によって自己紹介の切り口は様々です。
自分が話したいことを中心に語る人・・・
周囲の人に合わせて話題を選ぶ人・・・
その集まりの趣旨を踏まえて情報を選ぶ人・・・
どれが良い悪いではなく、その人の思考の傾向や人との距離感の取り方が自然とにじみ出ているかもしれません。そして、「この人ともう少し話してみたいな」と感じるポイントは、話の内容そのものだけでなく、その人の姿勢や雰囲気に表れていることが多いのではないでしょうか。
変化する自己紹介=キャリアの軌跡
ふと考えると・・・興味深いのは、自分自身の自己紹介も時間の経過とともに変わっていくことです。1年前の自己紹介と、いまの自己紹介を比べてみるとどうでしょうか?
たとえば、以前は「◯◯部の△△を担当しています」と役割中心に話していた人が、いまは「最近は後輩育成に力を入れています」と語るかもしれません。あるいは、仕事の肩書きよりも「週末は子どもと一緒に自然観察を楽しんでいます」と生活に軸を置く表現が増えるかもしれません。
この変化は、単なる言葉の入れ替えではなく、その人が歩んできたキャリアの軌跡を反映しているのではないでしょうか。
キャリア・アダプタビリティの視点
ここで役立つのが「キャリア・アダプタビリティ(Career Adapt-ability)」という考え方です。これは、変化の激しい環境の中で、自分のキャリアを主体的に形成していくために必要な適応力を指します。代表的に4つの要素があります。
関心(Concern):これからのキャリアを思い描く力
統制(Control):自分の選択に責任を持ち、方向を決める力
好奇心(Curiosity):新しい可能性を探り、試してみる力
自信(Confidence):挑戦に向かう自己効力感
自己紹介をどう語るかを考えることは、まさにこの4つの力を意識することにつながります。アダプタビリティとは「適応」のことで、人は変化する環境の中で自ら変化し適応を繰り返すプロセスを通じて、自らの可能性を拡大させながら自己概念を発達させ、実現を目指していくのです。だからこそ「ありたい自分になる」ためのキャリア・アダプタビリティが必要なのです。
いまの自己紹介を振り返りつつ、少し先の未来を想像してみると、
「次の自己紹介では、こんなことを語っていたいな・・・」
「こういう存在でありたいな・・・」
そう思い描くこと自体がキャリアの関心(Concern)を持つことにつながります。そして「そのために自分はどんな選択をしていくのか?」と考えることが統制(Control)の発揮になります。未来は自分でコントロールできるのです!
たとえば、「将来は社外でも通じる専門性を語れるようになりたい」と思うなら、日々の学びや経験の積み重ねが自己紹介の言葉を変えていきます。逆に、「職場での役割を中心に話していたけれど、今後は人生全体の充実感を表現したい」と思うなら、仕事と生活のバランスを整える意識が必要になります。
自己紹介は“キャリアの現在地”
「自己紹介」は単なる形式的な挨拶ではなく、自分のキャリアの現在地を表す言葉なのではないでしょうか。過去から積み重ねてきた経験と、これからの未来への意思が、短い数分間に凝縮されているのです。
もし「うまく自己紹介できない」と感じるときは、自分のキャリアに対する関心や自信が揺らいでいるサインかもしれません。逆に、話す言葉が自然と前向きに広がっていくときは、キャリアへの適応力が高まっている証といえるかもしれません。
自己紹介は、出会いの場をつくるコミュニケーションであると同時に、自分のキャリアを見つめ直す機会でもあります。
・過去の自己紹介との違いを振り返ること
・未来に語りたい自己紹介を描くこと
この2つの視点を持つことで、自分のキャリアの軌跡とこれからの方向性が自然と見えてきます。次に自己紹介をする機会が訪れたとき、単なる形式的なものとしてではなく、「今の自分をどう表現したいか」「これからの自分をどう描きたいか」を意識してみませんか?
それこそが、キャリア・アダプタビリティを高め、変化の時代をしなやかに生き抜く力につながっていくのではないでしょうか。
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