転機を“展機”に変える力
異動、転勤、転職―皆さんはその時、何を感じ、どう乗り越えてきたでしょうか?
そして、今まさに変化の中にいるメンバーがいたとしたら、その人の「転」をどう支え、どんな声をかけるでしょうか?
先日、学びの場で、ライフラインチャートを作成しながら、自分のこれまでを振り返っていた時のことです。いくつもの出来事が思い出される中で、私の人生には「転」が多かったことに気づきました。
転校、転居、転勤、転職──どれも「転」がつく出来事ばかりで、しかも、それぞれ複数回あり、まさに転機の連続であり、人生が常に“動き”とともにあったことに気づきました。
「転」という漢字には、“移り変わる”“方向を変える”“まわる”といった意味があり、一見、不安定さや不安感を感じるかもしれません。ですが、私にとっては、この“動き”が新しい出会いや学びを運んでくれたのです。
そして今もまた、転職と転居を経て、固定の職場を持たずに移動しながら仕事をしている状況があります。このスタイルを選んでいる自分に、少し前の私ならかなり驚いていたかもしれませんが、今は、この「転」が自分らしさを拡げ、幸せを呼び込んでいるように感じているのです。
もちろん、変化にはマイナスの側面もあります。慣れ親しんだ人や場所と離れる寂しさ、不安、期待とのギャップ・・・ただ、それらをネガティブに感じないのは、きっとその都度乗り越えてきたからかもしれません。ひとつひとつの転機に向き合い、試行錯誤しながら前に進んできた積み重ねが、今の「大丈夫」と思える自分を支えているのだと思うのです。
ここでふと考えました・・・・
同じ「転」でも、それを“どう意味づけるか”によって人生の見え方は大きく変わるのではないでしょうか。
転勤を「チャンス」と捉える人もいれば、「リセット」と感じる人もいる。
転職を「挑戦」と受け止める人もいれば、「不安」と感じる人もいる。
出来事そのものよりも、「どう感じ」「どう意味づけるか」がその後の行動や選択を左右するのではないでしょうか。キャリアの世界では、これを「意味づけ理論」として説明できます。ですが、理論よりも大切なのは、自分がその出来事にどんな意味を見出したかを“自分の言葉で語れるかどうか”だと思うのです。
なぜそのとき動いたのか?
なぜ迷ったのか?
どんな気持ちで次の一歩を踏み出したのか?
その一つひとつの“自分なりの意味づけ”を振り返ることが、キャリアの本質を見つめる時間になるのではないでしょうか。
そしてこの「意味づけ」を知ることは、自分へのプレゼントのようなものだと思うのです。誰かがくれるものではなく、自分の足で探し、手に入れる贈り物です。迷いながらも、自分の内側にある答えを見つけようとする過程そのものが、キャリアを進める力になるのではないでしょうか。
そして、リーダーとして部下と関わるとき、この「意味づけ」の力をどう育むかが大切になるのです。たとえば、異動や役割変更の際に「どう感じている?」「この変化にどんな意味があると思う?」と問いかけてみることで、部下は自分の中のストーリーを整理し、前に進む力を取り戻すことがあるかもしれません。人は、他者に自分を語ることで自分の意味づけを明確にしていくのです。
さらに、リーダーの皆さん自身も自分に問いかけてみてください。
・自分はこれまでの“転機”をどんな意味づけで乗り越えてきただろうか?
・今の自分を形づくっている「転」は、どんなメッセージを持っていたのだろうか?
・今まさに変化に立つメンバーに、どんな関わり方ができるだろうか?
「転」の多い時代だからこそ、リーダー自身の語りが、周囲の支えになることもあるのではないでしょうか。それは「こうあるべき」ではなく、「私はこう感じた」「こう意味づけた」という等身大の言葉でいいかもしれません。その誠実な語りが、変化に揺れる誰かの背中をそっと押すことになるのではないでしょうか。
人生は、思いがけない“転”の連続です。だからこそ、その一つひとつに自分なりの意味を見出せたとき、それは単なる「転」ではなく、確かな「展」──拡がりへと変わっていくのかもしれません。
私は、これからも自分の転機を楽しんでいきたいと思います。皆さんはいかがでしょうか?
<職場のご相談やキャリアのご相談などお問い合わせはこちらまで・・・>
