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時間をどう扱うかは、人をどう扱うか

城戸 貴子

「すでに15分オーバーしてる・・・」

働く中で、私たちは日々多くの時間に囲まれています。しかし、その時間は無限ではありません。限られた枠の中で、話したいこと・聴きたいこと・進めたい案件が常に同時進行していきます。しかし、時間は誰にとっても有限であり、平等です。だからこそ、時間の扱い方は信頼に直結します。それは単なる「スケジュール管理」ではなく、「相手をどう扱うか」という姿勢そのものではないでしょうか。

先日、あるミーティングの中で、予定していた終了時刻を超えても、話し合いが続いていく場面に遭遇しました。延長についての確認はなく、「このままずっと続くのでは?」と感じるほど、議論はまとまらず長引いていきました。相手主導だと、なかなか言い出しにくい・・・遠慮もあるし、場を乱したくない気持ちもある。皆さんもこのような経験があるのではないでしょうか。

特につらいのは、「時間を大事にされていない=自分を大事にされていない」と感じてしまう瞬間です。予定を無視されたような感覚、思いやりが欠けているように受け取れる態度。それらは小さな出来事に見えて、心に残りやすいものです。時には悲しさや憤りに変わることもあります。

では、このような事態の背景には、どんな心理や思考が潜んでいるのでしょうか。

延長を気にせず進めてしまう側の背景

ミーティングを延長してしまう人の多くは、実は相手を軽んじているわけではありません。しかし“悪気がない”ことが、結果として信頼を損ない、関係性を揺らしてしまう場合があるのではないでしょうか。

・話し合いを前に進めたい焦り

議題がまとまっていない、方向性が見えない。それを何とかしたい一心で、時間の存在が薄れがちになっているのかもしれません。

・相手はきっと大丈夫だろうという無意識の期待

「このぐらいの延長なら受け入れてくれるだろう」という思い込み。確認を省略してしまう背景には、この“無意識の許可”が働きがちです。

・自分の時間感覚を優先する癖

もともと時間管理が苦手、段取りや見通しを立てるのが弱い場合、本人は悪意なく“気づかず延長してしまう”こともあるかもしれません。

・コミュニケーションより成果を重視

「今日決めることが重要だから、多少の延長は仕方ない」と成果を最優先に考える傾向もあるようです。

いずれも“相手を雑に扱おうとしている”のではありません。しかし、「悪気がない」からこそ、時間が無限にあるかのように扱われ、結果として相手の貴重な時間を奪うことにつながるのです。

延長される側の心の動き

延長される側には、静かに、しかし確実に次のような感情が生まれやすくなります。

・自分の予定を軽視されたような痛み

限られた時間の中で参加しているのに、相手はその事情を配慮してくれない。これは“扱われ方”への敏感な反応を引き起こします。

・断りづらさによるストレス

延長に気づいていても、主導権が相手にある場では言いにくい。「空気に逆らってはいけない」という同調圧力が働きます。

・生産性の低さへの苛立ち

長引いているのに、議論が進んでいない。「時間だけ奪われている」という無力感や不満が生まれやすいかもしれません。

・仕事の段取りが崩れるストレス

ミーティング後には次の予定やタスクがある。「この延長で今日の業務が圧迫される」という切迫感も大きな負担かもしれません。

延長される側が感じているのは、「時間を奪われる」だけではなく、“自分が軽んじられたように感じる”ことが辛さの本質なのかもしれません。

時間の扱いは、人への敬意を表す

時間管理とは、スケジュール管理の話ではなく「人への敬意」だと考えます。時間を守ることは、相手の一日を尊重し、その人の背景や事情も含めて大切に扱うという姿勢そのものではないでしょうか。では、どうしたらいいのか?限られた時間で価値を最大化する為に色々と工夫が必要なのです。

・最初に“ゴール”と“優先順位”を共有する

「この1時間で話したいことは〇〇です。優先順位は①②③です」と冒頭で示すだけで、話の流れは格段に整理されます。相手とのすり合わせは、内容の充実さにおいても重要です。

・延長が必要な場合は、必ず“合意”を取る

主催側から先に提案することが鉄則です。「あと10分でまとめたいのですが、ご予定いかがでしょうか?」この一言があるだけで双方の心理的負担は大きくさがります。

・時間内に収める設計に切り替える

内容を濃くしたい場合こそ、「事前の資料提供」「宿題形式の振り返り」を活用できます。同時に、全部をリアルタイムで話さずとも、メールや共有メモで補足するという手段もあります。

自分がどう在りたいか

今回の出来事は、「相手はなぜ延長したのか?」だけでなく、「自分は時間をどう扱っているか?」という内省にもなりました。時間を守るとは、社会人としてのマナー以上の価値を持つのではないでしょうか。それは「私はあなたを大切にしている」という無言のメッセージであり、信頼や安心の土台をつくる行為です。逆に、時間を雑に扱うと、どんなに内容が良くても関係性は揺らぐかもしれません。

私たちは限られた時間の中で働き、生きています。

だからこそ、ミーティングという一つひとつの場を“人間関係を築く時間”として扱う視点が必要です。時間を尊重し、相手を大切に扱い、同時に自分自身の価値も守る。その積み重ねこそが、信頼される社会人としての在り方につながっていくのだと思います。

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ABOUT ME
城戸 貴子
城戸 貴子
国家資格・2級キャリアコンサルティング技能士
九州女子短期大学体育科卒業。小学生から短大まで水泳とソフトボールに明け暮れる日々を送る。卒業後、大手スポーツクラブで勤務。退職後、キャリアコンサルタント国家資格取得。「自分らしく」「生き生きと働く」ライフキャリアやワークキャリアを考え、歩んでいけるお手伝いをします。自分も周りも幸せになる世界を目指して。趣味:音楽鑑賞・ライブ参戦・読書(本屋さんが大好き)・空を見るのが大好き 好きな言葉は「雨過天晴」自分のキーワード「挑戦する・感謝する・ワクワクする」
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