点が線になるキャリア
「一歩踏み出す勇気」という言葉はよく耳にします。しかし、この言葉を丁寧に分解してみると、「一歩」「踏み出す」「勇気」という3つの視点が見えてきます。それぞれを深めていくと、個人の成長だけでなく、組織で働く一人ひとりの関わり方にも新たな気づきが生まれます。
■「一歩」に込められた希望
一歩という動作には、単なる開始以上の意味があると思います。そこには、これから先への期待や、まだ見ぬ世界に向かう前向きさが宿っていて、成功か失敗かを問うよりも、経験そのものを積み重ねる価値を感じさせてくれる言葉ではないでしょうか。
実は先日、「学会」という世界に初めて足を踏み入れました。自主シンポジウムに登壇するという、大変貴重な機会もいただき、キャリアにまつわる多様な学びに触れた2日間となりました。1年前の自分にはまったく想像できなかった世界。ですが、その“未知への一歩”を経験したことで、点と点だった学びや出会いが線となってつながり、高揚感と共に小さな自信へと変わっていきました。
一方で、自分の視野の狭さや学びの浅さも痛感し、「まだまだだな…」という想いも湧いてきました。しかし、不思議とその感覚はネガティブではなく、「これからやることがたくさんある」とワクワクしてきたのです。
その背景には、「点と点はいつかつながる」と教えてくださった方々、そして共に悩み、支え合った仲間の存在があります。この実感は、“目の前の人を大切にすることが、自分の世界を拡げる入口になる”という気づきへとつながりました。
部下育成の場面でも同じことが言えるのかもしれません。
行動そのものにまず光を当て、その後プロセス、そして結果へと対話を進めていく。そうすることで、部下の小さな一歩が次につながり、点が少しずつ線になっていきます。
■なぜ「踏み出せない」のかを一緒に考える
踏み出すとは、動くこと、行動することです。しかし、人はなぜ動けないのでしょうか?
失敗が怖い、評価されることが不安、理解が不十分で不安が大きい
など、理由は一人ひとり異なり、複雑に絡み合っています。だからこそ、「なぜ踏み出すか」「なぜ踏み出せないのか」を一緒に整理する対話が必要になるのではないでしょうか。
私自身、深く考えた先で「まずやってみよう」と思えた瞬間、心のハードルが下がる経験を何度もしてきました。意味や目的が腑に落ちた時、人は自然に前へ進めるのだと思います。
では、上司として部下の”一歩”をどのように支えるのか?
・業務の背景や意味をしっかり伝える
・不安を丁寧に受け止め、整理する
・小さく踏み出せるステップを一緒につくる
・必要以上にコントロールせず、挑戦を尊重する
こうした関わりが、「踏み出してみよう」という内発的なエネルギーにつながります。
■勇気とは“最初から”持っているものではない
“勇気”というと、強くて揺るがない心をイメージしがちですが、実際にはそんなに立派なものではありません。誰しも最初から上手くこなせるものなどありませんし、正解が明確な仕事も多くはありません。
だからこそ、スモールステップの積み重ねが重要です。小さな成功の体験を増やすことで、勇気は“育つ”のではないでしょうか。
そこには、上司の関わり方次第で、部下の勇気は大きく変わります。
・その人の特性や状況を知ろうとする姿勢
・取り組む仕事の意味を共に考える姿勢
・結果だけでなく、努力やプロセスを認める姿勢
こうした関係性は心理的安全性を生み、挑戦への意欲を育てます。組織開発の観点からも、挑戦が連鎖する環境づくりに欠かせない要素なのです。
■一歩は、いつか線になる
学会での経験が教えてくれたのは、「人との関係性が一歩の質を高め、世界を拡げる」ということでした。
今、目の前にいる上司や仲間、友人との関係を丁寧に育てていくことは、自分の未来に確実につながります。そして、そのつながりが次の挑戦への勇気になり、また新しい世界へとつながっていくのです。
一歩、踏み出す、勇気
この3つを意識することは、個人の成長だけでなく、チームの関係性を豊かにし、挑戦が自然に生まれる組織づくりにもつながるのではないでしょうか。
皆さんの“一歩”が、どんな人と繋がり、どんな未来に続いているのか?楽しみですね!
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