判断軸はどこから来るのか
「どうしたいの?」
「どれを選びたいの?」
相談の場で、よく聴く問いですが、多くの人がそこで言葉に詰まります。
「どうしたいかが分からないから悩んでいるんです・・・・」
実際、“自分が何を望んでいるのか”を最初から明確に言語化できる人はほとんどいないのではないでしょうか。むしろ、多くの社会人は、日々の仕事や役割に追われて、自分の選択基準がどこにあるのかを自覚しないまま時間が過ぎているのかもしれません。
では、私たちは選択に迷うとき、何を頼りし、判断したらいいのでしょうか。
私たちは仕事でもキャリアでも、何かを選ぶ場面に日々直面しています。しかし、いざ決めようとすると足が止まり、「どれが正解なのか分からない」「どうしたいかさえ分からない」という状態に陥ることは珍しくありません。実はこの“決められなさ”には、様々な背景があるようです。
選べないことを「優柔不断」と捉えることはなく、多くの場合、その裏側には・・・
・間違えたくないという正解志向
・評価されることへの不安
・損失を避けたいという心理
・情報過多による思考停止
といった複数の要因が折り重なっています。特にキャリアのように影響が大きいテーマほど、人は慎重になり、自分の基準を見失いやすくなります。
“自分の選択基準”はどこを見ると見えてくるのでしょうか?
「どうしたいか分からない」と感じる人の多くは、自覚している“選択基準”が曖昧な状態にあります。その基準とは、価値観・こだわり・避けたいこと・判断する際の癖・エネルギーが湧くポイントなど、行動や意思決定を裏で支える“軸”のことです。
その“軸”は普段意識されにくいため、1on1や面談では次のような問いが有効です。
・「頑張れた瞬間はいつ?」
・「絶対に避けたい働き方は?」
・「選択するとき、何を気にしがち?」
これらの問いは、その人が大切にしている価値観や判断パターンを自然に浮かび上がらせてくれます。また、その問いをキッカケに、自分にも見えていなかった自分を発見できるかもしれません。
選択基準には“過去の経験”が色濃く影響している
基準は未来志向でつくられるように見えて、実は多くが“過去”によって形作られています。
成功体験は「安心材料」となり、失敗体験は「避けるべきサイン」になり、他者評価の記憶が「判断を曇らせる」のです。
ですが、ここで重要なのは「過去の経験=事実」ではなく、「その当時の自分が意味づけた解釈」だという点です。つまり、過去の経験は判断基準として役立つ一方で、“化石化した解釈”として今の選択を縛っている可能性があります。
その為、過去経験は基準にもなるが、同時にバイアスにもなるのです。人が迷いやすくなる背景には、過去の捉え方・解釈によるバイアスが潜んでいます。
・成功体験に拘り、新しい選択肢を排除してしまう
・痛みを伴った失敗が、挑戦そのものを避けさせる
・否定や評価の記憶が、選択を“リスク”として感じさせる
これらが重なると、「選べない」「分からない」状態が強まっていくのです。
ではどう向き合えばいいのでしょうか?
リーダーがすべきは、正解を示すことではなく、相手が“選べる状態”に整えることではないでしょうか。そのための関わり方にはポイントがあります。
① 過去を今の視点で見直す問いを投げる
「当時のあなたがそう感じた理由は何?」
「今のあなたならどう意味づけ直せそう?」
「その経験は、あなたを何から守ってくれていた?」
過去の解釈が変わると、見えてくる世界も変わり選択肢が広がります。
② 情報を一緒に整理する
事実/憶測/他者の期待/自分の願望/避けたいことなど、これらを仕分けるだけで、頭の中の渋滞が解消されスッキリし、色々がクリアに見えてきます。
③ 未来の視点へ意図的に転換する
「どちらが未来のあなたを助ける?」
「一年後の自分が感謝しそうなのは?」
そんな問いが、判断軸を“過去の恐れ”から“未来の可能性”へと書き換えてくれるのです。
選択とは、未来をつくる行為
迷いとは、大切にしたいもの同士がぶつかっているサインであり、悪い状態ではありません。大切なのは迷わないことではなく、“迷ったときに立ち戻れる基準”を少しずつ育てていくことではないでしょうか。だからこそ、リーダーとの対話は、その基準を育てる大切な土台になります。
今の迷いを受け止め、過去を再編集し、現在を整理し、未来を描けるようになると、人は自然と自分で選べるようになっていきます。
選択とは、自分の過去を愛し、今を生き、未来を少し動かす行為ではないでしょうか。自分らしいキャリアを歩いていくためにも、部下の小さな一歩を支えられるリーダーでありたいものです。
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