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「相談する力」がキャリアをひらく

城戸 貴子

職場でこんな場面に出会ったことはありませんか?

「困っているように見えるけれど、誰にも相談していない」

「ギリギリまで黙っていて、問題が大きくなってから発覚する」

「『もっと早く言ってくれたら…』と後悔する」

こうした事態の背景には、「相談する力」の不足があるのではないかと感じています。「相談する力」は、社会人基礎力にある“前に踏み出す力”“考え抜く力”“チームで働く力”のそれぞれに関わる要素であり、キャリアを築く点においてもとても重要な力ではないでしょうか。

「相談する力」は キャリア形成のカギ

相談とは、他者に頼ることではなく、自分のキャリアや課題に主体的に向き合う行動の一つではないでしょうか。キャリアカウンセリングの場面でもこのような事があります。

「今の仕事に悩みがあるが、誰にも相談できず、転職を考えてしまう」

「将来の方向性が見えずに不安になっても、一人で抱えてしまう」

「上司や先輩に相談できていれば、もっと違った選択ができたかもしれない」

ご相談頂く方やその環境など色々な背景がありますが、これらは、単にコミュニケーションの問題にとどまらず、キャリアの選択肢を狭めてしまうリスクにもなり得ます。また、相談する事を通して、人間関係の風通しを良くするという視点もあるのではないでしょうか。

相談できない背景とは?

「相談してくれたらよかったのに・・・」そんな上司や先輩方の思いの一方、部下はどうして相談できないのでしょうか。

1. 「相談=できない人と思われるのでは」と捉えている

プライドや評価への不安がり、「相談=できない人と思われるのでは」といった自己防衛感情が働いたり、「迷惑をかけたくない」「こんなことを相談しても仕方ない」と思い込み、問題を一人で抱え込んでしまうことがあるようです。また、社会人は“自立していて当然”という意識から、相談が「頼りなさ」や「評価の低下」につながると誤解されがちです。

2. 環境に心理的安全性がない

上司や周囲に「話しにくい」と感じるだけで、キャリアの悩みを相談する機会は激減します。特に20代・30代前半の若手社員にとっては、上司との関係性がキャリア満足度に直結するケースも多く見られます。毎日の挨拶や、日頃の何気ないコミュニケーションの積み重ねが影響してくるのかもしれません。

3. 「何を、どう、相談したらいいのか」自分でもわかっていない

「何を、どう相談したらいいのか」がわからず、結果的に黙ってしまうこともあるかもしれません。また、自己理解がまだまだ浅い場合に、キャリアカウンセリングの場で話しながら、ようやく「自分が何に迷っていたのか?」に気づく方も少なくありません。

相談できない心理の奥にあるもの・・・

相談しない&できない背景には、こんな感情があるのではないでしょうか。

「こんなこと聞いたら怒られるかもしれない…」

「できないと思われたら恥ずかしい…」

「相談するほどのことじゃないかも…」

一見小さな感情のように思えますが、これらの思いが積み重なることで、本来共有すべきことが共有されず、チームや業務に支障をきたすケースも少なくありません。

しかし、仕事とは「自分一人のため」ではなく、お客様のため・組織のため・より良い成果のために行うものです。であるならば、迷ったときや行き詰まったときこそ、早めに誰かに相談して立て直すことは、重要なスキルであり行動なのです。

「困っているけれど、聞けない」のではなく、「困っているからこそ、今のうちに相談しておく」。そんな風に発想を切り替えられるようになると、視野が広がり、自律的な行動が取れるようになるのではないでしょうか。

相談できる場づくりとは?

  • ●相談することを“当たり前”にする風土づくり

上司や先輩は、日頃から「話していいんだよ」「迷ったら相談してね」とメッセージを発し続けることが大切です。相談は“特別なこと”ではなく、“日常の選択肢”と捉えてもらう工夫が必要ではないでしょうか。

  • ●相談のスキルと感覚を育てる

相談とは、ただ「話す」だけでなく、「自分の状況を言語化し、必要なサポートを求める」というスキルです。新人研修や面談の中で、相談の仕方を体験的に学ぶ場を設ける・・・という事も必要かもしれません。また、部下が自分の中にある言葉を言語化できる為に、上司や先輩の“聴く力”も重要なのではないでしょうか。

  • ●対話の場をキャリアのメンテナンスに活用する

定期的な1on1やキャリア面談は、相談する力を高める絶好の機会です。ただの進捗報告ではなく、「気になっていること」「迷っていること」も安心して話せるような構造をつくることが求められます。上司の話を聴く時間ではなく、部下が話したい事を話せる時間をつくるという事が必要なのではないでしょうか。

職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくため「相談する力」はどのような場面でも必要であり、キャリア形成の上でもカギとなります。そしてキャリアは「一人で築く」ものではありません。他者との対話、相談を通じて、自分の考えが整理され、視野が広がり、次の一歩が見えてきます。「相談する力」は、単なる職場のコミュニケーション能力ではなく、キャリアの可能性を拓く力です。

「相談できる人財」「相談できる組織づくり」は、これからの人材育成に欠かせないテーマではないでしょうか。

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ABOUT ME
城戸 貴子
城戸 貴子
キャリアコンサルタント
九州女子短期大学体育科卒業。小学生から短大まで水泳とソフトボールに明け暮れる日々を送る。卒業後、大手スポーツクラブで勤務。退職後、キャリアコンサルタント国家資格取得。「自分らしく」「生き生きと働く」ライフキャリアやワークキャリアを考え、歩んでいけるお手伝いをします。自分も周りも幸せになる世界を目指して。趣味:音楽鑑賞・ライブ参戦・読書(本屋さんが大好き)・空を見るのが大好き 好きな言葉は「雨過天晴」自分のキーワード「挑戦する・感謝する・ワクワクする」
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