「大切に扱われる経験」が自己肯定感を育む

「心の奥底にあるフタを開ける」
信頼関係(ラポール)をどう築くのか・・・“心のフタ”という視点で考えると、“心のフタ”を開けるには、まず “心の準備”が必要で、その準備の一つとして「他者から大切に扱われたとき」という重要な要素があるのではないでしょうか。
キャリア支援の場で多くの方と向き合っていると、ある共通点に気づきます。それは「自分は大切に扱われている」という感覚を持てた人ほど、新しい挑戦に向かう力が育ちやすいということです。
けれども「大切に扱う」という言葉には、時に誤解が伴います。たとえば、相手に意見を言わない、注意をしない、何となく腫れ物に触るように接することを「大切にしている」と勘違いしてしまうケースです。しかしそれは本当の意味での「大切に扱う」ではありません。むしろ、相手を遠ざけてしまうことさえあるのではないでしょうか。
私が考える「大切に扱う」とは、相手を上から見下ろすのでもなく、過剰に気をつかって避けるのでもなく、”横から目線”で、その人と並んで歩むように向き合うことです。
小さなやり取りの中にある「大切さ」
「大切に扱う」というと、特別な出来事や大きな信頼を想像しがちです。たとえば責任ある仕事を任されたり、仲間から大役を託されたりする経験は、確かに自信を大きく揺り動かすものになるかもしれません。ですが、日常のもっと小さなやり取りの中にこそ、そのエッセンスは存在しています。
朝、職場で交わす「おはよう」。
一日の終わりに伝える「お疲れ様」。
何かをしてもらった時に添える「ありがとう」。
これらはほんの数秒で終わる挨拶や言葉ですが、相手の心に「自分はここにいていいんだ」という感覚を伝え、残します。たとえ一瞬であっても、相手の存在を認め、心に向けて言葉を届けること。それが積み重なったとき、人は「大切にされている」という確かな実感を持ち始めます。
自己肯定感と一歩を踏み出す力
人が「大切に扱われた」と感じる経験は、自分の存在が認められた証として心に残ります。それが自己肯定感の土台になります。
自己肯定感が高まると、「自分にはできるかもしれない」という自己効力感につながり、新しい行動を試みる勇気がわいてきます。逆に、自分の声が無視されたり、存在が軽んじられたりする経験が重なると、「どうせ自分なんて・・・」という否定的な思い込みが強まり、挑戦を避けてしまうようになります。
大きな転機となる成功体験の裏側には、必ず日常における小さな「大切にされた」経験の積み重ねがあります。だからこそ、日々の挨拶や感謝の言葉をおろそかにしないことが大切なのではないでしょうか。
そして・・・・
キャリアコンサルティングの面談の場も、実は「大切に扱われる経験」を体感できる時間なのです。
クライエントが語る言葉を否定せず、真剣に耳を傾ける。たとえまとまっていない話でも最後まで聴き切り、その人の内にある思いや価値を知る。これは単なる技術ではなく、「あなたの存在そのものが尊い」というメッセージを伝える行為なのです。
こうした関わりを受け取ったとき、クライエントは「自分には話す価値がある」「私は認められている」と感じ、そしてその感覚が「もしかしたら一歩踏み出せるかもしれない」という未来へのエネルギーにつながっていくのではないでしょうか。
今日からできる「大切に扱う」とは!?
「大切に扱う」とは、決して難しいことではありません。誰かに毎日特別なプレゼントを用意することでも、大げさな言葉で励ますことでもありません。
・隣にいる人と”横の目線”で関わること
・心に向けて「おはよう」「お疲れ様」「ありがとう」と伝えること
それは一日の中で何度もできる、小さな行為です。ですが、その積み重ねが相手にとっての「大切に扱われる経験」となり、やがてその人自身が未来に向けて一歩踏み出す力を生み出すのではないでしょうか。
今日、誰かに心を込めて「ありがとう」と伝えてみませんか?
その一言が、相手の自己肯定感を支え、未来への一歩を後押しするかもしれません。そして、プラスのストロークは相手だけでなく、自分にも良い影響を与えます。
自分を大切にするからこそ相手も大切にできるのではないでしょうか。
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