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成長の前にある、「分からない」を出せる空気

城戸 貴子

新年度を迎えるこの時期、新入社員や転属者を迎える準備として、私たちは「どう教えるか」「どう育てるか」に目を向けがちです。けれど、その前に立ち止まって考えてみたいことがあります。成長や学習が始まる、もっと手前にあるものです。

今回は、成長の前にある、「分からない」を出せる空気について考えてみたいと思います。

分からないと言えない職場で起きること

「分からないことがあったら、聞いてね!」この言葉自体は、多くの職場で交わされているのではないでしょうか。ただ、その言葉が本当に機能するかどうかは、日頃の空気の積み重ねに左右されているのかもしれません。

それは、分からないと言ったときに、

少し困った顔をされた、忙しそうにされた、「前にも説明したよね」と返された・・・

そんな経験が重なると、人は次第に聞かなくなるかもしれません。その結果として、

・自己流で進めてミスが増える

・確認が遅れ、手戻りが大きくなる

・「主体性がない」「受け身だ」という評価だけが残る

本人の力とは別のところで、成長の機会が遠のいてしまうこともあるのではないでしょうか。

新入社員・転属者が最初に抱える不安

新しく職場に来た人が最初に感じる不安は、業務内容そのものよりも、

「どこまで聞いていいのか?」

「誰に、いつ聞けばいいのか?」

「分からないと言って、どう思われるのか?」

といった、人との関係性に関わるものが多いように感じます。不安の正体は、「分からないこと」そのものではなく、分からないと言ったときの”反応が予測できないこと”なのかもしれません。

この状態が続くと、人は“聞かないことで適応する”ようになります。目立たないように、波風を立てないように、一見すると問題なく回っているようで学習は静かに止まっていく・・・そんなことも起き得ます。

教える以前に必要な「空気」の話

だからこそ、育成や教育の前に必要なのは、教え方の工夫ではなく、「聞いてもいい」という前提が、職場に共有されているかどうかではないでしょうか。

・質問されたときに、手を止める

・「いいところに気づいたね」と返す

・後から「あの質問、助かったよ」と伝える

こうした“小さな反応の積み重ね”が、「ここでは分からないを出していい」という安心感をつくっていくのかもしれません。

この時期を整えることは、誰のためか

新入社員や転属者を迎えるために整える空気は、実は新しく来る人のためだけのものではないようにも思います。今、一緒に働いている仲間にとっても、そして自分自身にとっても、働きやすさを見直すきっかけになるのではないでしょうか。

例えば、年度が変わっても、いつものルーティンのまま4月を迎えることもできます。けれど、あえて「新年度」という節目を使うことで、職場全体が立ち止まり、向き合いやすくなることもあるのかもしれません。

その一つとして、机の整理整頓のような、身近な行動も挙げられます。

物理的な余白をつくることが、気持ちの余白につながります。そんな感覚を持つ人もいるのではないでしょうか。

管理職・先輩社員への問い

もし今、「最近、質問が少ないな」「もっと主体的に動いてほしいな」と感じる場面があるとしたら、それは本人だけの問題ではないのかもしれません。

・分からないと言いやすい空気は、本当にあっただろうか?

・自分の反応は、どう受け取られていたのだろうか?

・忙しさの中で、「今は聞かない方がいい」というサインを出していなかっただろうか?

育成とは、教えることを増やすことではなく、聞いてもいい余白を残すことなのではないでしょうか。

新年度という節目をきっかけに、「何を教えるか」だけでなく、「どんな空気で迎えているか」を整えること。

それは、これから来る誰かのためだけでなく、

今ここで働く私たち自身を助けることにもつながっているのかもしれません。

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ABOUT ME
城戸 貴子
城戸 貴子
国家資格・2級キャリアコンサルティング技能士
九州女子短期大学体育科卒業。小学生から短大まで水泳とソフトボールに明け暮れる日々を送る。卒業後、大手スポーツクラブで勤務。退職後、キャリアコンサルタント国家資格、キャリアコンサルティング技能士2級取得。「自分らしく」「生き生きと働く」ライフキャリアやワークキャリアを考え、歩んでいけるお手伝いをします。自分も周りも幸せになる世界を目指して。趣味:音楽鑑賞・ライブ参戦・読書(本屋さんが大好き)・空を見るのが大好き 好きな言葉は「雨過天晴」自分のキーワード「挑戦する・感謝する・ワクワクする」
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