信頼関係の前にある、評価されない時間
「で?」「どうするの?」
部下から報告を受けているとき、思わず口にしてしまう・・・管理職やリーダーであれば、一度は心当たりがあるのではないでしょうか。
限られた時間の中で、判断し、決め、動かすことが求められる立場で、結論を早く知りたくなるのは、ごく自然なことだと思います。
ですが、その問いかけが重なる職場では、いつの間にか「途中の話」が上がってこなくなることがあるのではないでしょうか。
前回は、成長の前にある「分からない」を出せる空気について考えました。
今回はその一歩手前、『信頼関係の前にある「評価されない時間」』について、管理職の視点で考えてみたいと思います。
ミスは、突然起きているように見える
「また同じようなミスが起きた」
「なぜ、もっと早く相談してくれなかったのか」
現場でよく聞く言葉です。これは、能力の問題なのか、意識が足りないからなのか、そう考えたくなる気持ちも、無理はありません。ただ、ミスは本当に“突然”起きているのでしょうか?
小さな違和感や迷い、「このままでいいのだろうか」という引っかかりが、途中のどこかで存在していて、それが表に出てこなかっただけ。あるいは、出せなかっただけ、というケースも少なくないのではないでしょうか。
報連相の質は、会話の順番で決まる
ミスが多い職場では、報告・連絡・相談の量と質が落ちていることがあるようです。
報告は結論中心。相談は、ある程度整ってから。
途中の考えや、まだ言葉にならない迷いは、自然と省かれていきます。その背景には、途中で話すと評価される経験の積み重ねがあるのかもしれません。
話し始めるとすぐに「で、結論は?」「どうするつもり?」そう聞かれると、人は学習し、「考えがまとまってから来よう」「正解を持っていかないといけない」と行動が変わります。その結果として、報連相は“報告”に偏り、“相談”や“途中共有”は減っていきます。
先日、ある管理職の方と「部下との対話」について話をしていた時のことです。その方は、こう話してくれました。
「自分としては、コミュニケーションは取れていると思うんです。でも、部下の反応がいつも『わかりました』『大丈夫です』で終わる・・・反応が薄いというか、本当に役に立つ会話だったのか?本当に大丈夫なのか?いつもモヤモヤが残るんですよね・・・」
表面的には、返事はしているし、反発もない。指示も否定されていない。それでも残る、「何か噛み合っていない感じ」。このモヤモヤは、その場の会話だけの問題ではないかもしれません。
むしろ問いは、これまでの会話の中で、評価されない時間はあっただろうか?という点にあるのではないでしょうか。「わかりました」「大丈夫です」という言葉は、納得や理解ではなく、無難に終わらせるための返答として選ばれている可能性もあります。
もちろん、評価を急ぐのは、管理職として自然なことです。管理職やリーダーは、決断する役割を担っています。時間も責任も限られる中で、判断材料を早く集めたいと思うのは当然です。「任せているのだから、考えてきてほしい」そう思うのも、自然な感覚です。
ただ、考え始めの話なのか、判断を求める話なのか。今はどのフェーズの話なのかが共有されないまま結論を求めてしまうと、会話は一気に“評価の場”になります。
「評価されない時間」は、意図的につくる
評価されない時間とは、何も言わないことでも、放置することでもなく、ポイントは、「今は聞くフェーズだ!」と決めることです。
今は判断しない
今は結論を出さない
今は材料を集める
評価をしないのではなく、評価のタイミングを後ろにずらす。これは、優しさでも甘やかしでもなく、意図を持ったマネジメントではないでしょうか。
たとえば、「今日は判断ではなく、まずは、考えてる途中を聞かせてほしい」「“大丈夫”の中身を知りたいんだけど、今どこが一番引っかかってる?」こうした一言が、評価されない時間をつくります。
それでも、聞くフェーズを保つのは難しく感じるかもしれません。話が長く感じ、沈黙が気になることもあります。
だからこそ、完璧を目指す必要はありません。少しだけ、結論を遅らせてみることや、少しだけ、途中を聞いてみること。その積み重ねが、報連相の質を変え、ミスの芽を早く見つけることにつながっていくのではないでしょうか。
評価されない時間があるから、人は話しながら考えることができます。
話しながら考えられるから、迷いを外に出すことができます。
そして、迷っても関係が揺らがない経験が、信頼関係の土台になるのではないでしょうか。
<職場のご相談やキャリアのご相談などお問い合わせはこちらまで・・・>
