「こうあるべき」が、人を硬くする!?
「私はこうあるべきだ!」
そんな言葉が、いつの間にか自分を苦しくしていることはないでしょうか。
私たちは日々の生活や仕事の中で、知らず知らずのうちに多くの「べき」を抱えています。
「上司はこうあるべき」
「部下はこうあるべき」
「社会人ならこうあるべき」
「失敗してはいけない」
もちろん、こうした考え方そのものが悪いわけではありません。むしろ、それらは私たちが大切にしている価値観や信念から生まれています。
譲れないもの、譲れない事はありますか?
仕事への姿勢。
人との関わり方。
大切にしている価値観。
それは、これまでの経験の中で育まれてきた、自分だけの財産です。
キャリア理論には「キャリア・アンカー」という考え方があり、私たちは経験を重ねる中で、自分が大切にしたい価値観や譲れない軸を育てていく、というものです。
専門性を追求したい人もいれば、人をまとめることにやりがいを感じる人もいます。安定を重視する人もいれば、社会への貢献を大切にする人もいます。
どれがいい、悪いというものではなく、また、どれも間違いではなく、むしろ、その軸があるからこそ、私たちは迷いながらも前へ進むことができます。
しかし、その大切な価値観が、いつしか「こうあるべき」という固定的な考え方に変わってしまうことがあります。すると、心や頭は少しずつ硬くなっていきます。
例えば、責任感の強い人は、
「自分がやった方が早い」
「任せて失敗するくらいなら自分でやる」
そんな思いから行動しているうちに、気づけば自分だけが忙しくなり、周囲の成長の機会を奪ってしまうことがあるかもしれません。
また、人を大切にしたいと思う人ほど、
「相手を傷つけてはいけない」
という思いが強くなり、本来伝えるべきことを伝えられなくなることもあります。
向上心の高い人であれば、
「もっと成長しなければ」
「まだまだ努力が足りない」
と、自分を追い込み続けてしまうかもしれません。
そして、これはどれも長所なのです。
ですが、その長所が行き過ぎると、自分自身を縛る”硬さ”へと変わることがあります。
自分と他者
そして、この「べき」は自分だけに向くとは限りません。
私たちは自分の価値観を基準に、他者を見ることがあります。
「もっと責任感を持つべきだ」
「まずは行動すべきだ」
「なぜ相談しないのだろう」
そんな思いが浮かぶこともあるのではないでしょうか。
もちろん、その背景には相手への期待や成長を願う気持ちがあるかもしれません。ですが、その価値観が強くなり過ぎると、相手の事情や考え方を見る余裕がなくなってしまいます。針の穴のような視点になってしまい、相手を決めつけ、相手の良いところが見えなくなってしまうかもしれません。
人はそれぞれ異なる経験をし、異なる価値観を持っています。
自分にとって当たり前のことが、相手にとって当たり前とは限りません。
だからこそ、多様性が求められる時代には、自分の価値観を持ちながらも、別の見方に耳を傾ける姿勢が大切になるのではないでしょうか。モノの見方や捉え方の柔らかさが大切なのです。
職場でも同じです。
「こうあるべき」が増えるほど、人は発言しづらくなり、失敗を隠し、相談をためらうようになります。「なぜ、相談しないんだ!?」という背景には、日々の”べき”が隠れていて重くのしかかっているのかもしれません。
反対に、「そういう考え方もあるよね~」と受け止められる組織には対話が生まれます。そこから問いが生まれ、対話がスムーズになり、お互いの価値観や考えの風通しがよくなるのです。そして、挑戦もしやすくなります。
価値観を捨てることではなく、自分の軸を持ちながら、その軸だけに縛られないこと。
「こうあるべき」を「そういう考え方もある」に少しだけ広げてみることです。
私たちの強みは、キャリアを支える大切な財産です。
だからこそ、手放す必要はないのです。ただ、その強みが「こうあるべき」に変わった時、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
「本当にそうだろうか?」
「別の見方はないだろうか?」
そんな問いを自分に向けてみてください。
それは大きな変化ではありませんが、その小さな問いかけの積み重ねが、心と頭の可動域を少しずつ広げてくれるのではないでしょうか。
柔軟体操が一日では身体を柔らかくしないように、レジリエンスも一日で身につくものではありません。
だからこそ今日も、ほんの少しだけ視点を変えてみる。
そんな小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。
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