どちらも大事。だから悩む。。
「マネージャーへの推薦は嬉しい。だけど、自信がないから断ろうかな?」
「もっと仕事をバリバリやりたい。だけど、家族との時間も大事だから無理かな?」
これは、一般的に言われる昇進=良い事だ、という考えで周りからは「マネージャーへの昇進良かったね!おめでとう!」と言われ、喜びの一方、自分にできるかどうか不安に押しつぶされそう・・・・という思いがある。この矛盾する感情や考えを抱えたままでは、ストレスやより深い不安を引き起こしかねません。これは、両価性といい同じ対象や状況に対して相反する感情や態度を同時に抱く状態を指します。恋愛や人間関係、選択や判断の場面などで生じやすいと言われています。
キャリアコンサルタントの学びの途中のある場面で「マネージャー職の打診があって・・」と言うクライエントに対し「おめでとうございます!これから楽しみですね!」と声をかけた事がありました。ですが、その会話の後、何だか話が進まずギクシャクし、面談ロールプレイを終えました。その後、講師の方より「クライエントの方はマネージャー職の打診についてどんな風に言われていましたか?」と改めて問われ「・・・・・・あっ!」と気づかされました。昇進に対してめでたい、楽しみだ、と思ったのは私の考え(価値観)で、クライエント役の方は、そういえば浮かない顔をしていたし、声のトーンが下がっていたな・・・と。クライエントからしたら、自分の気持ちを素通りして無視して、良い事だ!と言われたら、もうその人には何も話したくない・・・と思われてもしかたありません。
これは相手の気持ちを一般化し決めつけた事だけではなく、選択や判断の場面にある「嬉しいけど、嬉しくない」「好きだけど、嫌い」という、相反する気持ちを知ろうとしていない、全く共感ゼロの場面でした。
人の心の中には、「前向きな気持ち」と「後ろ向きな気持ち」という、相反する気持ちを同時に持ったり交互に抱いたり、そんな心の葛藤を皆さんもご経験があるのではないでしょうか。
両価性は自己と他者の関係やアイデンティティ形成にも影響すると言われており、キャリア形成において両価性が生じると次のような問題が考えられます。
■意思決定の迷い
両価性によって、キャリアの洗濯に対する迷いが生じやすくなります。「チャレンジングな仕事に就きたいが、安定も欲しい」「より成長できる環境を希望するが、リスクは避けたい」といった相反する願望があると、どちらを優先すべきか決断が難しくなり、結果として決断が先送りされたり、中途半端は選択になったりする可能性が高まります。
■目標の不明確さ
目標設定に対しても曖昧さが生じることがあります。「もっと高い収入を得たいが、プライベートも充実したい」というすぐに両立しづらい目標を抱えたままだと、何を優先すべきかが不明確になり、行動が一貫しなくなることがあります。この曖昧さはキャリアの進展を阻害する要因になるかもしれません。
■満足度の低下
両価性があると、選択したキャリアに対する満足度も低下しやすくなります。「この仕事を選んでよかった」と思っても、反対の気持ちが影を落とし、「別のキャリアを選んでいただどうだったのか」と悩むことが多くなり、結果として満足度やモチベーションが下がる事があります、これにより仕事への集中力が欠け、パフォーマンスにも悪影響が及ぶ可能性もあります。
■ストレスと不安の拡大
両価性により葛藤が続くと、慢性的なストレスや不安が生じる可能性が高まります。これらの感情はメンタルヘルスに影響を与え、最悪の場合バーンアウトや職場からの離脱に繋がる事もあるかもしれません。
■自己成長の阻害
両価性による迷いや葛藤が解消されずに残ると、新たな挑戦やスキルアップを躊躇する原因になる事があります。自己成長には失敗やリスクが伴いますが、両価性によりそのリスクが強調されることで、成長の機会を逃してしまう可能性があります。
ではどうやって乗り越えるのか?
キャリア形成における両価性を乗り越えるためには、自己分析や価値観の明確化が重要です。どっちが大事?どちらかを選択という前に、どっちも大事だと思っている自分の気持ちを大切にし、考えや思い価値観を見つめ直してみる事です。たとえば、キャリアカウンセリングなどを通して、相反する感情や欲求を整理し、最も自分らしく、最も自分に合った方向性を見出すことが効果的であり、その方向性を見出せた自分に対しても自己効力感・自己肯定感も高まり有効です。また、短期的なゴールと長期的なゴールを分け、現実的な段階を一歩一歩踏むことで、両価性による迷いを最小限に抑えることができます。
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