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リーダーがつくる柔らかな始まりが組織を変える

城戸 貴子

「結局、指示確認で終わってしまった・・・」

「あまり意見がでなかったな・・・」

会議が終わったあと、そう感じることはありませんか?

きっとその原因は、議題の難しさではなく、会議やミーティングの“始まり方”にあるかもしれません。ほんの数分の雑談や“チェックイン”が、メンバーの安心感を高め、発想や意見交換を活性化させます。リーダーや経営者こそ、この「柔らかな始まり」をどう設計するかが、チームを動かす力になるのではないでしょうか。

場の温め方

前職でスポーツクラブに勤務していた頃、レッスン開始前の「数分間」を大切にしていました。目的は、参加者との接点をつくり、空気を柔らかくすることです。今からはじまるレッスンをワクワク楽しんでいただけるための「数分間」なのです。

「昨日は大雨でしたね」「週末はどこか行かれましたか?」そんな何気ないやり取りが、笑顔と安心感を生み、レッスンを進めやすくしてくれていました。

その為、レッスン前には天気や時事ネタや気になること、美味しかった食べ物など、いくつもの話題を用意して臨んでいました。そして、話題を振るだけでは十分ではなく、大切なのは、参加された方(相手)の言葉をどう受け取り、どう広げていくかなのです。

たとえば「昨日ラーメンを食べたんだよね~」と言われたら、「寒い日は温かいものが恋しくなりますね。お勧めのトッピングは何ですか?」と返し、その一言が、相手との間に小さな信頼の“橋”をかける事に繋がりました。

この感覚は、スポーツの現場だけでなく、職場の会議やミーティングの際にもそのまま通じるのではないでしょうか。特にリーダーやマネジャーの立場であれば、冒頭の数分をどう設計するかが、その後の議論の質を左右するかもしれません。それが“チェックイン”の時間なのです。

[チェックインが生み出す3つの効果]

  •  ・心理的安全性をつくる

安心感のある場でこそ、人は声を出し意見を出し合えます。「最近食欲旺盛で困っています・・・」「昨日のニュース、驚きましたね」そんな軽い雑談から始めるだけで、緊張がほぐれ、自然な会話の流れが生まれます。形式的な会議が、参加型の対話へと変わる瞬間なのではないでしょうか。

  • ・ 状況の“共有化”が進む

短い会話から、メンバーのコンディションや温度感をつかむことができます。「今日は少しバタバタしていて…」という一言に、現場のリアルが詰まっています。日頃の労いを伝え、その情報を拾い上げられるリーダーは、会議の進め方や判断を柔軟に調整できるのではないでしょうか。

  •  ・発想を広げる助走になる

硬い議題に入る前に言葉を交わし対話することで、思考がほぐれ、発想が豊かになります。例えば、「最近印象に残ったこと」「最近心が動いたこと」などを一人ずつ共有してから議題に入るだけで、会話の流れが活性化し、アイデアが出やすくなるかもしれません。

一方で、チェックインを省いてしまうと、会議が“決まりきった形”に終始しやすくなります。場が硬直し、誰も意見を言わないなど、「結局、上からの指示確認だけで終わった」という感覚が残るかもしれません。その背景には、心理的距離のあるまま本題に入ってしまう構造的な問題があるのではないでしょうか。

雑談やチェックインは、時間の無駄ではありません。むしろ、組織の思考を動かすための潤滑油であり、リーダーがその価値を理解し、意識的に“柔らかな始まり”を設けることが、チームの創造性を引き出す鍵になるのではないでしょうか。

では、この雑談力をどう磨くか?

必要なのは、日常の中にテーマを見出す感受性とアンテナではないでしょうか。

空を見上げて季節の移ろいを感じたり、街角で流れる音楽に耳を傾けたり、チェーン店の季節限定メニューから話題を拾ったり、そうした小さな感覚が、雑談の引き出しを増やします。

また、人の喜怒哀楽に気づく感性も重要です。「今日は少しお疲れですね」「それはうれしいですね」と、相手の気分に寄り添う言葉が自然に出てくるとより空気が柔らかくなるのではないでしょうか。雑談とは、単なる会話ではなく、相手の感情を尊重し、関係を温めるリーダーシップの一形態なのです。

雑談は“仕事の助走”

雑談やチェックインは、決して余計な時間ではなく、スポーツで言えばウォーミングアップのようなものです。より良いパフォーマンスをするためにも、怪我をすることなく行う為にも大切なことです。それは、心と頭をほぐし、チームの呼吸を合わせる“助走”の時間なのです。

そして、忙しいときほど、時間に追いかけられその数分を惜しみがちですが、実はその数分が組織の生産性を左右するかもしれません。

「今日はどんな気分ですか?」「最近何か面白いことがありましたか?」そんな一言から、チームの空気が変わり、発想と信頼が生まれていくのではないでしょうか。

リーダーの役割とは、議題やミーティングをさばくだけではなく、人と人の間に流れる空気を整え、柔らかくすることです。柔らかな始まりが、強いチームをつくる第一歩になるのではないでしょうか。

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ABOUT ME
城戸 貴子
城戸 貴子
国家資格・2級キャリアコンサルティング技能士
九州女子短期大学体育科卒業。小学生から短大まで水泳とソフトボールに明け暮れる日々を送る。卒業後、大手スポーツクラブで勤務。退職後、キャリアコンサルタント国家資格取得。「自分らしく」「生き生きと働く」ライフキャリアやワークキャリアを考え、歩んでいけるお手伝いをします。自分も周りも幸せになる世界を目指して。趣味:音楽鑑賞・ライブ参戦・読書(本屋さんが大好き)・空を見るのが大好き 好きな言葉は「雨過天晴」自分のキーワード「挑戦する・感謝する・ワクワクする」
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