分からないと言えることが、自分の場所をつくっていく
「何が分からないのかさえ、うまく言葉にできない・・・」
環境が変わると、人は思っている以上に自信を失いやすいものです。
新しい職場、新しい役割、新しい人間関係など、これまで当たり前にできていたことでも、急に手応えがなくなる瞬間があるのではないでしょうか。
ですが、能力そのものが突然なくなったわけでなく、変わったのは、自分が立っている環境です。慣れていた場所では自然に分かっていた仕事の流れや距離感が、一度リセットされると、「できるかどうか」ではなく、「どう動けばよいか分からない」状態になるようです。
そして、多くの人の中で自信の感覚は一時的に揺らぎます。この時、大切なのは、自信を失わないことではなく、その揺らぎの中でどう立て直していくかではないでしょうか。その入り口になるのが、本来は「分からない」と言えることなのかもしれません。
とはいえ、「分からない」と口にするのは簡単ではありません。
出来ないと思われたくない。
こんなことも知らないのかと思われるのが怖い。
少しでも良く見せたい気持ちもある。
私自身も、同じ感覚を持つことがあります。だから、まずは自分で調べるため、最近であれば、生成AIに質問することが最初の選択肢になることもあります。
事前に情報を得ることは、とても大切です。理解を深め、整理してから相談しようとする姿勢は、主体的な行動でもあります。
ただ、そこで一つ気づいたことがあります。情報を得ることと、関係をつくることは、同じではないということです。
AIは答えをくれます。
ですが、その職場ならではの背景や優先順位、誰にどう相談するとよいかまでは分かりません。もし「分からない」をすべて自分の中だけで解決しようとすると、知らないうちに、“分からなさを共有しない関係”の始まりを自分で作ってしまうことがあるかもしれません。
最初は効率的に見え、迷惑をかけないように、自分で何とかしようとしているだけなのに、周囲は困っていることに気づけなくなる・・・そしてある日、「もっと早く聞いてくれたらよかったのに」という言葉につながることもあります。
以前、私自身が「何だか自信がなくて…」と上司にこぼしたことがありました。するとその方は、「最初から自信なんてなくていいよ。そんなの後からついてくるから」と笑いながら、こう続けました。「自信がないというより、自分の中でしっくり来ていないんじゃない?何が気になってるの?」
その言葉に、はっとしました。
自信がないのではなく、違和感をうまく言葉にできていなかっただけだったのです。それから改めて自分の企画を見直し、「自分として納得できる形」に整えたとき、前に進める感覚が戻ってきました。
分からないことや迷いは、一人で解決するものではなく、対話の中で輪郭が見えてくることがあります。
だからこそ大切なのは、何も考えずに「分かりません」と言うことではなく、「こう考えてみたのですが、ここから先が分かりません」と“相談”に変換することなのだと思います。
自分なりの思考を添えることで、対話は「教えてもらう場」から「一緒に考える場」へ変わるのではないでしょうか。
同時に、先輩や上司の側にも役割があります。
質問が出ることを未熟さではなく、関係が動き始めた“サイン”として受け取れるかどうかです。
新人は状況が分からない。
先輩は新人の分からなさが分からない。
だからこそ、お互いの状況を知ろうとすることが、人間関係の始まりになります。
キャリアとは、自分一人で完成させるものではありません。
新しい環境で「分からない」と口にすることは、一見すると自分の未熟さをさらけ出す勇気がいる行為に思えるかもしれません。しかしそれは、周囲を自分の味方に巻き込み、共に歩むための「連携のスイッチ」を入れることなのかもしれません。完璧な自分を見せようとして孤立するよりも、少しの隙を見せて手を取り合うこと。その積み重ねが数ヶ月後には、何よりも「居心地の良い場所」を作ってくれるはずです 。
もし今、何が分からないかすら分からず立ち止まっているなら、まずはその「モヤモヤ」を誰かに話すことから始めてみませんか?
その一歩が、新しいあなたのキャリアを動かす確かなサインになるはずです 。
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