職場で、“自分の役割”を演じすぎていないだろうか?
5月も後半になり、職場の中で少しずつ”自分の立ち位置”のようなものが見え始めてくるのではないでしょうか。
「この人は盛り上げ役」
「頼れる人」
「しっかりしている人」
「優しい人」
「いつも元気な人」
そんなふうに、周囲からの見え方や、自分自身の役割が少しずつ形づくられていきます。
もちろん、それ自体が悪いわけではなく、社会の中で人と関わりながら働く以上、ある程度“その場に合わせた自分”を持つことは自然なことだと思います。
心理学者のユングは、人が社会の中で適応するために持つ側面を「ペルソナ(仮面)」と表現しました。
「仮面」と聞くと、自分を隠しなんだか無理をしているような印象を受けるかもしれませんが、それは、“嘘の自分”というより、人と関わり、役割を果たしながら頑張っている、自分の一面とも言えるのではないでしょうか。
例えば、
周囲を安心させるために明るく振る舞う
チームがスムーズに回るように気を配る
新人だから迷惑をかけないよう頑張る
リーダーだから弱音を見せない
そんな姿も、職場の中で自然と身につけてきた“役割”なのかもしれません。ただ、その役割を長く続けていると、時々、自分でも気づかないうちに苦しくなることがあります。
「いつも元気な人」と思われているから、疲れていても言えない。
「しっかりしている人」と見られているから、他の人に頼れない。
「優しい人」でいたくて、断ることができない。
気づけば、“その役割を続けること”が、自分を支えるものでもあり、同時に自分を縛るものにもなっている場合があるのではないでしょうか。そして、役割が苦しくなるのは、“自分自身が演じ続けること”だけではなく、職場で、周囲からの見え方や期待が、知らないうちに“その人らしさ”として固定されていくことがあります。
「○○さんはしっかりしているから大丈夫」
「〇〇さんはいつも明るい人だから・・・」
「○○さんは頼れる人だから・・・」
そうした言葉は、最初は信頼や期待として受け取れる一方で、時には“その役割でい続けなければならない空気”へ変わっていくこともあります。すると、本当は疲れていても言えなくなったり、助けを求めにくくなったりする場合があります。
ある意味では、“役割”という仮面だけではなく、“周囲の色眼鏡”も、人を苦しくさせることがあるのかもしれません。
私自身、長年の指導現場の中で、「もっと良い指導をしたい」「もっと理想に近づきたい」という思いが強くなりすぎた時期がありました。
「指導者としてちゃんとしなければ」
「場の空気を作らなければ」
「楽しませなければ」
そんな思いが強くなればなるほど、いつの間にか“役割を演じる”ことに必死になっていたように思います。もちろん、その姿勢自体が悪かったとは思ってはなく、実際、その役割があったからこそ乗り越えられた場面もあり、周囲との関係性が作られていった部分もありました。
ただ、ある時ふと、「自分自身が楽しめているだろうか?」と感じ、「楽しい授業」「楽しい指導」を大切にしたいと考えるようになりました。
でも、この“楽しむ”ということは、単に明るく振る舞うことではありませんでした。むしろ、「全部一人で背負わない」「少し力を抜いてもいい」と、自分自身にも余白を作ることだったように思います。
そしてこれは、チームの中でも同じことが言えるのではないでしょうか。
誰かがずっと「頼れる人」でい続ける。
誰かがずっと「盛り上げ役」でい続ける。
誰かがずっと「大丈夫な人」でい続ける。
そうなると、その人自身が疲れてしまうだけでなく、周囲も「その人は大丈夫」と思い込み、本当の変化に気づきにくくなることがあります。例えば、
「最近少し静かだな」
「一人で抱え込んでいそうだな」
「いつもより笑顔が少ないな」
そんな小さな変化が見えていても、“いつものその人”というイメージが強いほど、見過ごしてしまうこともあるのかもしれません。だからこそ、チームの中では、“役割”だけで人を見過ぎないことも大切なのではないでしょうか。
人は一つの顔だけで生きているわけではありません。
元気な日もあれば、疲れる日もある。
支えたい日もあれば、支えてほしい日もある。
その揺れや変化を許容できる空気があると、人は少しずつ「素の自分」も出しやすくなっていくのかもしれません。また、自分自身も、「ちゃんとしなければ」「期待に応えなければ」と頑張り続けるだけではなく、
「今日は少し疲れています・・・」
「ちょっと助けてもらってもいいですか?」
と、ちょっと言葉にしてみることです。それは弱さではなく、“働き続けるための調整”なのではないでしょうか。
職場では、知らないうちに“自分の役割”ができていきます。
でも、その役割は、自分を縛るためのものではなく、本来は人と関わりながら生きていくための一つの手段だったはずです。
だからこそ時には、「その”役割”を少し頑張りすぎていないだろうか?」と立ち止まってみる。
そして同時に、「その”人”を一つの役割だけで見ていないだろうか?」と周囲の見方にも目を向けてみる。
そんな時間が、少しずつチームの空気を柔らかくし、お互いが長く働き続けられる関係性へ繋がっていくのかもしれません。
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